老僧の涙
広大な中国大陸の大地を進む日本人の一行があった
天台宗比叡山の僧侶の一行である
向かうのは天台山、日本天台宗の発祥の地である
その中に病を持った老僧が一人混じっていた
体力が年齢と持病のせいで衰え、いかにも辛そうに歩く姿は痛々しかった
それでも、しっかり前を向き天台山の方向を見据えていた
そして、ついに到着した一行の前には息を飲むようなすばらしい景色が有った
老僧も疲れも忘れて立ち尽くすのであった
ついに老僧はハラハラと涙を流し始めたのである
そして、思わずその口から出た言葉は・・・「ありがたい」ではなく
「妻に、この景色を見せてやりたいなあ」
そう言いながら、またハラハラと涙を流し広大な景色を見つめるのであった
その老僧はそれから約3年後この世を去った
ある一人の老僧の話しである
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