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2007年9月19日

「欧の理髪医師」に対し「江戸の町火消髪結床」

きょう、行きつけの「床屋」に行ってきた。何か「床屋」とは「差別用語」になるらしく放送できないのだそうが、昨日見たテレビ番組で「明石屋さんまさん」はこの言葉を普通に番組でしゃべっていたところをみるとさほど騒がれないようだ。

「床屋」の由来には主に二通りのものがある。

  1. 1200年代のころ長州藩(山口県あたり)で元武士であった「釆女亮(うねめのすけ)」という人物が月代(さかやき)といって武士の頭髪をそる商売を始めた。
    その家が武士の屋敷で掛け軸などを置いた「床の間」があったため「床の間のある店」と呼ばれ、それが「床場」となり「床屋」となった。
     
  2. 江戸の町では髪を結う商売は橋下などで折りたたみの屋台で床を敷いてやっていたことから「髪結い床」といわれていた。
    その語尾の床が「床屋」に変化していった。

どちらのいわれにしてもどこにも差別的要素は存在しないのであるがなぜ差別なのか?たぶん「寝床、床入り」などの連想からなのかも知れないが、ちょっと強引な気もする。

江戸の町ではこの床屋さんは別な顔を持っていたのを知っているだろうか?

時代劇などで火災が発生すると、そのれを知らせる半鐘が打ち鳴らされる場面を良く見ることだろう。
あの半鐘を鳴らしているのは床屋さんなのである。髪結いとは最初橋下の屋台でやっていたが法が変わり橋の袂に家を立てさせ地代を免除する代わりに「橋火消し」「橋番」をやることが義務付けられたのである。

それが江戸中期からは町火消しに組み込まれていったそうである。
もっと面白いのは、江戸の町では泥棒に入られ盗品を取り戻したいときは「床屋さん」にたのむと現金以外はほぼ100%の確立で見つかったそうなのである。

今で言う「常駐消防団」と「私立探偵」と「警備」も兼務していたわけだ。
「これはすごい!」

このことは明治なっても続いたらしく、昭和22年の法改正になるまで「理容所、床屋さん」の職業を管理する機関が警察だったことでもそれがよく判ると思う。

ヨーロッパはもっとすごい、

ヨーロッパでは「理髪医院」といわれ床屋さんは「医療機関」であったのである。
その名残が理容所にあるのくるくる回る「サインポール」というものである。

あの色は一説では「動脈静脈、包帯」の色を表しているとされる。

しかし、もう一つの説、治療のさいに血がついても目立たないように赤色治療棒に風で白い包帯が絡んだ様子をあらわしている。
それにで外科専門医との違いを示したというほうが正しいような気がする。

言葉としては中国では理髪と書いて「リーハー」と読み、日本では平安時代の公家のなかに出てくる職業名が「理髪役」であるので「理髪」が最も古くから使われている言葉らしい。

いまは理美容師は免許制になり、管轄は厚生労働省になったわけだが、免許が要らない人たちもいる。
それはお相撲さんの髷(まげ)や歌舞伎役者の鬘(かつら)をいう「床山さん」という職業である。

話はえらく遠回りになったが、「床屋」はけして差別用語でないことを判ってもらえたかと思う。

・・・・・・・・・・・・   ・・・・・・・・・・・   ・・・・・

<補足>

  • 理容業美容業同一の店舗共用し同時営業することが禁止されています。
     
  • 放送業界では差別用語扱いになっていますが、それは「理髪業、理髪店、理髪師、理容師、床屋さん」のようにに少し丁寧に言い換えれば良いらしいそうです。
    実は明確なその理由を説明できるところは(理容業団体などを含む)無いようです。
    差別用語になる「現地人」も「現地の人」に直せばよいというような過剰反応的ものらしいです。

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コメント

いやはや、たいしたモンですね~
床屋もビックリ!!

**屋は一般に差別用語(使用自粛用語)になっている場合が多いようです。
「**屋さん」といえばOKです。

投稿: もうぞう | 2007年9月20日 20:08

)もうぞうさん

「さん」をつければいいんですか?
さんまさんは付けていませんでしたが、なにもなかったですね

投稿: 玉井人 | 2007年9月20日 22:27

とても勉強になりました。“明石屋さんま”は差別用語なので、「明石屋さん」または「明石家さんま」はOKなんですね。
でも普段の生活の中では「床屋」が一般的ですよね。
「床屋」って見下した言い方なんでしょうかね。“髪結いの亭主”なんていったら、少し小馬鹿にした言い方なんでしょうけれど。

投稿: koji | 2007年9月21日 00:20

)kojiさん

もっと別な理由があるのだと思います。
どんな言い方をしても受けて側の感覚で変わりますからね

投稿: 玉井人 | 2007年9月21日 07:55

何かで読んだ
「言葉は単なる文字の組み合わせ。使う人間側に差別の意識があるのだ」。
今の今まで「床屋さん」以外の言葉を使ったこと無かったので驚きました。(会話で「理髪店行ってきまーす」なんて言わないですよね?)

投稿: 秋ぎつね | 2007年9月21日 07:56

)秋ぎつねさん

差別なのはわれわれが使う分には良いようで、「マスメディアのようなところでは使うな」というものらしいです。
農家をさす「百姓」も差別で「お百姓さん」に治せということと同じらしいです

投稿: 玉井人 | 2007年9月21日 08:34

参考になります。

「理容院に行く」より 「床屋に行ってくる」です。
美容院なら 「美容院に行ってくる」です。

髪も切ってもらい 顔も剃ってもらい というと
床屋って感じ。

最近使われなくなった 裏日本 表日本は
差別用語といわれると そうなのか・・・

床屋は 別に違和感がなく 使っています。
昔から使っている言葉なので。

投稿: aonami | 2007年9月21日 13:36

)aonamiさん

そうなんですよね。どちらかというと親しみをこめて言ってますよね

投稿: 玉井人 | 2007年9月21日 19:05

差別用語か?について
私が考えるに、「床屋」じたいあるいは「床」に関しては、差別と言うほどの事はないと思います。

むしろ床屋・八百屋・魚屋・肉屋・酒屋・・・などのように「屋」で終わる言葉は、ちょっと見下すというか、呼び捨てにしているような?印象を受けます。


投稿: もうぞう | 2007年9月21日 20:47

)もうぞうさん

なんとなく判る気がします。
わたしもいきなり農民といわれるのは良い気分じゃないですからね。

投稿: 玉井人 | 2007年9月21日 21:35

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