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2009年6月19日 (金曜日)

「改正農地法」が成立した・・けど

昔は地主が自分の所有する農地を小作人に貸し与え農作物(主に米)を作らせ、その出来た作物とそれを売った儲けのほぼ全てを地主が受け取るという古い制度です。
そのため、小作人は毎年毎年作った米のほとんどを小作料として取られ貧乏から抜け出せないものでした。食べ物も食えず水だけで暮らす貧しい姿から「水飲み百姓」の言葉が生まれるもとになりました

現在の農地法は何度も改正されていますが、基本的なものは戦前、明治ころまであったその「小作人」を守る、いわば「小作人保護法」に近いものです。

 <農地の利用と所有の優先>
耕作者による農地の所有が最も適当である

つまり、「農地を貸したら、出来た作物は耕作者のものであるから地主には利用権限は無い」というものがだいたいの基本になっています。

さて、今回成立した「改正農地法」はこうなりました

  1. 「耕作者による農地の所有が最も適当である」の文言が削除された
  2. 農業外企業が農地を借りる場合、市町村の指定土地以外の場所が可能になった
  3. 農業外企業が農地を借りる場合、その経営陣の1人以上が農業に常に従事しなくてはならない
  4. 農地を借りて耕作できる期間が20年⇒50年に延長された
  5. 農業生産法人に企業の出資が10%以下から25%になった。さらにその企業が地元農商工に連携して販売まで担う場合50%未満まで可能になった
  6. 借りた農地をそれ以外に転用したりした場合の罰金が300万円⇒1億円に引き上げられた。
  7. 農地は学校や公共施設建設の場合都道府県知事の許可が必要になった。(以前は無許可で良かった

全体の改正ポイントで分かるのは、「農業以外の企業の参入がし易くなった」、「地元農家による法人化の促進」、「休耕地の削減」などだと思います。

とくに、私が注目したのは1番もそうですが、「2番」です。
これは、以前から問題になっていた休耕田を有効利用とする目的から市町村が農業以外の企業にそれを優先的に貸していたのですが、
この法改正で荒れ地になってリスクが高い休耕田や放置農地より、今現在使われている好い場所の農地のほうに企業は集まってきそうなきがしてきます。
そうなれば山沿いの荒れ地はさらに荒廃が進む可能性も出てきます。

あちこちに民主党がいろいろな農業防衛策を入れることを認めさせたようですが、欠陥がありそうです。

石破農林水産大臣は「水田の減反選択制」も主張したそうですが、農水省官僚の猛反発により法案提出を断念したようです。

減反議論の方がもっと大切なよう気もするんですが、官僚の反対にも理屈があるんでしょうね

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コメント

ご先祖様が営々と作ってきた、素晴らしい土。一旦、荒廃すると元には戻らない・・・こんな事をしていたらバチが当たるって思う情景によく出会います。大きな立派な平地の田んぼをコンクリートで固めて、一方、棚田みたいな山の中の小さな田んぼが綺麗に手入れされています。作り手の苦労がしのばれます。
 私は部外者で、作っていただいたものを食べるばっかりですが、農協が金貸しになり、土建屋が仕事を増やすために、田んぼが破壊され、誠実な農家や農業は壊されているんじゃないでしょうか。

投稿: 山口ももり | 2009年6月19日 (金曜日) 08:09

)山口ももりさん

その“土建屋”が今不景気で減った受注で余った労力を休耕や減反で荒れた農地を利用して農業を始めるところが増加しているそうです。
そのような外部企業の農業参入をしやすくし、荒れた農地を元に戻すことが改正農地法の目的の一つになっています。
結果はどうなっていくかは分かりませんが田んぼ破壊防止策のようです

投稿: 玉井人ひろた | 2009年6月19日 (金曜日) 08:32

農業が企業化し易くなったということでしょうか。
食料の自給率が極端に低い日本。
一般消費者としては不安になります。
自国で消費する食料は自国で生産するのが基本ではないでしょうか?
企業化して農作物がより安く安定的に供給されるようになれば消費者としては少し安心ですが、従来農家の方への影響はどうなるのでしょう…?
価格競争になったら厳しいですね…。
海外の企業も参入できたりするのでしょうね。
そうなると日本で生産されたものが日本の市場に出ない可能性もあるわけですね。

投稿: がんさん@大和の国 | 2009年6月19日 (金曜日) 12:25

)がんさん

その農家自体が、国の指導も有り農業生産法人化またはそれに準ずる組織化が進みJAがそれに資金をだしたり、自治体がJAを通さずに適正補助金を農家に直接渡るようになってきています。
これは、専業農家が激減し作物作りが個人ではもうできなくなってきているからなんです。
法人化した農家に出資金を企業が出しやすくなった、ともいえます。

そして、おっしゃる通り価格競争は食管法が撤廃されてからすでに激化していますので、生き残りをかけた農家へ旨く利用可能な法改正としたようです。効果は不明ですがね

投稿: 玉井人ひろた | 2009年6月19日 (金曜日) 12:35

改正農地法、今の農業の状況よりよくなるのか、悪くなるのか、やってみないと分かりませんが、不安は、玉井人さんが仰っているようにありますね。
わたしは、農業は生産者になったことはなく、常に消費者ですが、ですから、農業の生産者の方達の本当の苦労は、知りません。
でも、自国の食料自給率が低いのは、健全なことではないと思います。
どうすれば魅力ある、収入がちゃんとある農業になるか?そういうことも考えることが必要な気がします。
ずっと前から農業に従事している方々も、新たに参入される人々も報われる、そういう改正農地法であって欲しいですね。

投稿: 浜辺の月 | 2009年6月20日 (土曜日) 23:25

)浜辺の月さん

昔から農家は「作れば勝手に売れていく」という考えが有りまして、販売への意識が薄かったんです。
それがいまは販売の意識が強まり、企業化が進み、その結果として、兼業農家と専業農家にかなり考え方やいろんな面で隔たりと温度差が起きています。
難しいものですよ

投稿: 玉井人ひろた | 2009年6月21日 (日曜日) 08:06

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