「いか人参」VS「松前漬」・・ルーツ論争
昨日の日本テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」の新しい企画で「これさえあれば他におかずは要らない」というもので紹介されました福島県の食べ物は「いかにんじん」でした
スタジオでは大好評で福島県民としてはとても嬉しく見ていました。
しかし、この食べ物歴史についての説明には激怒してしまい、嬉しかった思いは消し飛んでしまいました。
番組での説明はこうでした
「1807年、北海道の松前藩が現在の伊達市周辺に国替えになった際、藩士たちが故郷をしのび、松前特産のイカと、福島で多く採れた人参を合わせて食べたのが始まりと言われているそうです」
これは違います。
この説は北海道の松前の方たちが言っている「いか人参とは⇒‘松前漬がルーツ’」という、“北海道民の説”です
福島県の紹介だったのですから、番組としては「福島県説」を放送するのが当然なのに、何と腹立たしいことでしょう。
<福島県民の説>(松前漬とは⇒‘いか人参がルーツ’)
昔、北海道から国替えになって福島県にやってきた松前藩の藩主松前氏が福島県の郷土料理「いか人参」を初めて食べ、あまりにもおいしかったので何年か後に再び北海道に国替えになったときにその味が忘れられずに地元北海道(松前町)でそれをまねて作らせ広めたのが松前漬の始まりと言われている
お分かりの通り、テレビで紹介されたのとはまったくの逆の説が福島県民の考え方です
実は、この論説は両者で論争になっているくらいなんですから、テレビとしては少なくとも両方の説を紹介するのが公平な報道だと思います。
福島県民は怒っちゃいますよ!即、日テレに私は抗議の意見メールを送りましたよ)
それはともかく、私としてはどちらの説・言い分が正しいのか?検証するうことにしてみました。
それで分かった事実をまず並べて見ましょう。
<松前藩のお殿様の動き>
- 松前藩(福山藩ともいう)とは何代もの間、蝦夷地の土地ほぼ全土を統治していたのが松前家だったことからついた名称である
- 1790年ごろ、その松前家は北海道をロシア国家に侵攻されたのだが、処罰を恐れた松前家は徳川幕府にそのことを秘密にしていた。
そのことが後に幕府に知れ渡り、松前家(領主=松前道廣氏)は領地全土没収される - 1807年には現在の福島県梁川町に強制的に国替え(左遷)されてしまう。
- 1821年、徳川幕府の政策転換によって再び松前家は故郷の蝦夷地へ帰参することが許される
以上のように、松前藩の主従が福島県と北海道を往復していることは事実でした。
<いか人参について>
- 基本は人参と乾物のイカを千切りにして醤油で漬け込んだシンプルなものだが、バリエーションとして昆布などを刻んで混ぜることも多い
- 昔は福島県の県北地方を中心に冬の保存食として作られ、彩りも良いためお正月や祝宴などに出す特別なものだったようである。
- お年寄り等の話から推察すると今から約150年~200年前だから、江戸時代からすでに作られ食べていたようだ
<松前漬け>
- 漁業地帯の北海道南端地域のため昔は大量に数の子が獲れ、それにスルメと昆布を刻んで塩漬けにして冬の保存食としていたもの
- 後に数の子が少なくなりスルメと昆布だけで塩漬けにするようになり、「数の子昆布」や「こんぶするめ・こんぶイカ」などとなどと呼ぶ郷土料理が出来上がる。
- 昭和12年(1937)北海道の「山形屋」と言うお店がこの「こんぶいか」に数の子を混ぜ、それまでの塩漬けを止めて醤油漬けにした「元祖松前漬け」と言うのを製造販売、それが大ヒットして全国に北海道の松前漬けが知れ渡ることになった
この事実を福島県説と北海道説に照らし合わせた結果から言えることは簡単です。
つまり、イカ人参と松前漬けは似ているがまったく無関係、さらに無関係な松前藩の国替えの話をくっつけた、いわばどちらも“噂話し的”なそれも後世につけられた“後付の俗説”となる可能性が高いですね。
ちなみに、青森県に昔からある郷土料理の「津軽漬け」と「ねぶた漬け」は数の子・昆布・スルメを刻んで醤油漬けにしたもので、現在の松前漬けとほぼ同じだそうです。
これは、北海道の松前藩が弘前藩(青森県)から米を仕入れていたという強い交流があったことの証拠ですね。(明治になって北海道の松前は青森県になった)
おまけ、
テレビの袋詰めイカ人参はどこの店の商品だったか分かりませんでしたが、県外のかたがお土産にしたいなら福島市飯坂温泉駅近くにある「佐久商店さん」へ行くとあります。
この店、近くの人はよく知っているんですが俳優の「佐藤B作さん」の実家でイカ人参の店なんですよ
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コメント
眠っていたようで、観た記憶が無いです。
とかくこの番組は、偏りがちですね。
投稿: もうぞう | 2010年6月18日 19:47
)もうぞうさん
現場取材はかなりずさんなところが有るようです
投稿: 玉井人ひろた | 2010年6月18日 19:55
ずっと北海道が元祖だと信じていましたが、福島県説もあるんですねー。TVで放送される事は、疑ってかからないと騙されますね。
投稿: HAPPY太郎 | 2010年6月19日 11:52
)HAPPY太郎さん
「北海道が元祖」なんて言ったら本気で福島県人は怒る人がいますよ。
ちなみにネット百科事典「ウィキペディア」では「松前漬けは福島県のイカ人参がルーツ」というふうに「福島県説」だけが記載されています
投稿: 玉井人ひろた | 2010年6月19日 12:16
は・は・は・・・怒り心頭ですか。先日の旅、松前に言ってきましたよ。又そのうちにアップします。
投稿: 山口ももり | 2010年6月20日 21:39
)山口ももりさん
まったく正反対の解説ですからね。怒ります
投稿: 玉井人ひろた | 2010年6月20日 21:43
昨日、ブラタモリで日本最古の醤油蔵が銚子のヒゲタ醤油であることと、
銚子に漁港がある理由も放送していました。
この2点で郷土料理の「いか人参」が商品名の「松前漬け」の原点であることが証明できてしまいます。
ヒゲタ醤油は江戸時代に創業開始であり
参勤交代で福島藩の藩主が銚子で醤油を手に入れて持ち帰ったと推測できます。
したがって醤油を使っていない蝦夷の郷土料理の塩漬けの「松前漬け」はルーツではなく料理の収れん進化(同じようなものが異なる場所に派生すること)です。
「イカと人参」の醤油漬けである以上、現在の商品名の「松前漬け」のルーツはは郷土料理の「松前漬け」では
ありません。
青森に福島の「いか人参」が伝わったが人参が無かったため、青森から距離的に近い北海道の海の特産物の「昆布と数の子」を混ぜ「津軽漬け」や「ねぶた漬け」出来上がったのでしょう。
商品が発売されるときは言ったもん勝ちです。
「元祖・本家・老舗」どれも「ウチが一番最初だ!」と誇張してるだけで、最初に考案した人が創業して事業主にはなっていません。
誰を否定するということではありませんが、
インターネットに限らず。テレビ・ラジオ。新聞などのマスメディア・政府の発表もフェイクニュース・ウソの混ざった情報だらけです。
信じられる情報は皆無です。
広い視野と論理的な視点と時代背景から
自分で真実を見つけ出すしかないでしょう。
分かり得る情報から歴史的に一番古く、流通面から一番合理的に導き出されるのは海産物と農作物・山菜を合わせたものすべてのルーツを私は銚子~三陸と考えます。
なぜなら他の地域においては自己主張が強く
他の食材と混ぜない文化であったため、おかずの品数が多いと思います。
投稿: かず | 2019年6月 9日 17:15
かずさんへ
ご訪問と、コメントもいただき、痛み入ります
投稿: 玉井人ひろた | 2019年6月 9日 21:11