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2010年8月16日 (月)

君死にたもうことなかれ・・・

君死にたもうことなかれ

旅順口包囲軍の中に在る弟を歎きて・・・与謝野晶子作詩

ああ弟よ 君(きみ)を泣く 君死にたもうことなかれ
末に生まれし君なれば 親の情けは勝(
まさ)りしも
親は刃
(やいば)をにぎらせて 人を殺せと教えしや
人を殺して死ねよとて 二十四までを育てしや

(さかい)の街の商人(あきびと)の 旧家を誇る主(あるじ)にて
親の名を継ぐ君なれば 君死にたもうことなかれ
旅順
(りょじゅん)の城は滅ぶとも 滅びずとても 何事ぞ
君は知らじな 商人(
あきびと)の 家の掟(おきて)に無かりけり

君死にたもうことなかれ 皇尊(
すめらみこと)は 戦いに
おほ自らは出でまさね 互(
かたみ)に人の血を流し
(けもの)の道に死ねよとは 死ぬるを人の誉れとは
大御心(
おおみこころ)の深ければ もとよりいかで思(おぼ)されん

ああ弟よ 戦いに 君死にたもうことなかれ
すぎにし秋を父ぎみに おくれたまえる母ぎみは
嘆きの中に 痛ましく わが子を召され 家を守
(も)
安しと聞ける大御代
(おおみよ)も 母の白髪(しらが)はまさりぬる

暖簾
(のれん)のかげに伏して泣く あえかに若き新妻(にいづま)
君忘るるや 思えるや 十月
(とつき)も添(そ)わで別れたる
少女心
(おとめごころ)を思いみよ この世独り(ひとり)の君ならで
ああまた誰をたのむべき 君死にたもうことなかれ

この詩を知っているでしょうか?

これは与謝野晶子氏が戦場に行くことになってしまった一番下で長男でたった一人の弟へ、その別れの悲しみと怒りを書いた詩です。

私はこの詩をNHKのテレビ小説「おしん、少女編」で出会いました。主人公のおしんが山の中で行き倒れそれを助けてくれたのが、山小屋に隠れていた逃亡兵でした。その兵隊が文字や「戦争は悪いことだ」と教えるときにこの詩を悲しい表情で訴えるように大きな力強い声で朗読するのです。

幼いおしんには内容は解らなかったが、「戦争はやってはだめ」ということだけはしっかり感じ取ったシーンでした。

それ以来、終戦記念日の近くになると、最初の文章が頭に浮かびます。

「どうか死なないでください。どうして戦争に行くのですか。あなたの親は人殺しをしろと教え24歳まで育てたのですか、家の跡継ぎはどうするの?か弱い若妻はどうするの・・・」

そしてこの文章は「天皇自身は戦場に出ないで国民の死を誉めるだけじゃないか」と天皇まで激しく批判しています。

昔の詩なので少しわかりにくい文章ですが、何度も繰り返し読むとそのなりふり構わない悲しみの言葉、戦争への怒りが解ってくる詩です

これこそ「平和」への思いそのものの詩でしょう。
これは第一時世界大戦のころに作られたのですが与謝野の思いとは逆にその後第二次世界大戦は起きてしまいます。

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コメント

戦争は悪いことだって皆知っているはずですが、無くなりませんね。
それで儲けようなんて思っている輩もいるようですから。

投稿: もうぞう | 2010年8月16日 (月) 18:45

もうぞうさんへ

たぶん、永久に無くならないでのでしょうね

投稿: 玉井人ひろた | 2010年8月16日 (月) 18:51

有名な詩ですね。
多分に女性の感情が込められています。
その感情を否定はしませんが、個人と国家の立場の違いを感じます。
戦争はしてはなりませんが、自衛のためにはどうしても避けられない場合があります。
国家が無くなれば個人としての足場も無くなります。
武力によらない戦争もあります。
毎年1万人以上の定住中国人が増え続けている今、日本は侵略されていると感じます。
今も決して平和な世の中ではありませんね。

投稿: がんさん@大和の国 | 2010年8月17日 (火) 08:26

天皇批判の詩を書いてよく逮捕されなかったというのがまずは驚きますね。その頃はまだ負け戦では無かったからなのでしょうか。
戦争は一部の政商等特別な人以外は、誰も願わないと思いますが、これも広くとらえれば時代の趨勢で起こるべくして起こってしまうものではないかと思いますね。まあ戦争の肯定否定は別として、この戦争によって科学技術の急速な進歩があり、現代の生活には欠かせない便利なものが発明され、より便利な生活が出来ている事も事実だと思います。しかし、その技術進歩によって便利になり過ぎ、現代の人間の精神も病んできている事も事実では有ります。人の命と引き換えに便利になった世の中に生きて、それを享受し、またそれによって精神を病んでいる。何とも皮肉なものだと思います。

投稿: HAPPY太郎 | 2010年8月17日 (火) 10:19

がんさんへ

>武力によらない戦争もあります
今なら朝鮮半島の戦闘状態が、武力無し戦争の形でしょうかね
 
 
HAPPY太郎さんへ

逮捕まではいかなかったようですが、出版禁止にはなったようですね

投稿: 玉井人ひろた | 2010年8月17日 (火) 15:54

この詩の最初の方は知っていましたが、天皇批判をしている詩の文面は知りませんでした。
戦争によって文明が発達する部分もあるかもしれませんが、与謝野晶子の言おうとしていることは分かります。ただ戦争をしないと宣言しただけではだめだということも分かりますが・・・・・。

投稿: 浜辺の月 | 2010年8月17日 (火) 22:58

浜辺の月さんへ

宣言だけではだめなんですよね。強い外交力が欲しいのです

投稿: 玉井人ひろた | 2010年8月18日 (水) 06:57

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