日本とアメリカの“核の密約”
日米間で核の日本国内持込について密約は今まで政府が答弁したように無かったのか?、それとも本当は有ったのか?、もし有ったとすればどの時点で誰が約束したのか?
この問題は民主党が政権をとったときに国会で初めて決着を見ました。
当時の佐藤総理大臣の残した物の中で親族が保管していたものに「核の密約は存在した」ことを裏付ける書物が岡田外務大臣によって探しだされ、鳩山元総理は日本政府として初めて密約の存在が有ったことを公式に認めましたが、そのことはなぜかあまり大きな報道にならなかった気がします。
密約ができたのは昭和47年(1972)5月15日の当時の日本は佐藤総理大臣、アメリカはニクソン大統領の間で行われた沖縄返還成立の舞台裏に有りました。
その舞台裏は、それぞれの国の“密使”に、日本=若泉 敬氏(国際政治学者)、アメリカ=モートン・ハルペリン氏(若泉氏とはアメリカ留学時代に親交があった)の二人が選ばれ代理交渉を行ったことから始まります。
<日本側の絶対条件>
- 米軍基地に配備されている(中距離)核ミサイルの撤去
<アメリカ側の絶対条件>
- 核兵器の基地内配備
{そして密約はできた}
- 沖縄返還にあたり米軍基地内の核ミサイルは撤去するが、基地の存続を認める
- そのさい核兵器の撤去移動費用と基地維持費用総額3億2000万ドル(1152億円)を日本が負担する
- ただしアメリカ軍は、有事の際は核兵器を日本国内の基地へ持ち込みすることを事前協議(初めは事前通告だった)の上可能とする
この密約によって、アメリカ軍は沖縄本土返還の条件として、沖縄での基地を永久的に使用することを日本政府に認めさせることになりました。そして、アメリカ軍の核持込も条件付で認めさせることに成功します。
もっとアメリカのしたたかなところがあります。それは
- この交渉条件に使った中距離核ミサイルは元々沖縄から撤去予定だったのを隠して交渉していたこと
- 交渉で決まった公式な金額3億2000万ドルの他に、非公式で沖縄に有った放送局やアメリカ人用の施設移動費用総額2000万ドル(72億円)も日本政府に要求し負担させた
当時のアメリカはベトナム戦争で莫大な国家予算を使っていたため、逼迫した国家財政の穴埋めのためできるだけ多くの金額を日本政府から「沖縄返還」と「核ミサイル排除」をたてに金を引き出そうと懸命だったようです
日本は3億2000万ドルの請求明細、内容を確認しないどころか追加予算まで認めたため、「日本政府は強く要求するといくらでも金を出す」という印象をアメリカでは固定化されてしまったようです。
このとき沖縄基地では相次ぐ不祥事で島民の怒りが溜まりいつ暴動が起きてもおかしくない状況だったらしく、アメリカ政府はその島民による暴動とその暴動によって日米関係が悪化することを極度に恐れ「沖縄返還で機嫌をとろう」と計画していたようです
その沖縄の状況を的確に日本政府やマスコミや国民が知っていればこんな内容不明で怪しい金額3億2000万ドルは出されなかったと思います。
日本の外交の弱さは、情報収集力の不足もかなり根底にあるのかもしれません
このアメリカの策略を知ったり、日本政府の態度に深く落胆した若泉敬氏は後年に自殺してしまいます。
さらに、密約を暴露した人物は逮捕されたりし政界の闇とはいつの時代も非情さが垣間見られますね。
政権交代がなければこういうことはわからなかったでしょう。いろいろ言われますが、一党が長く政権を取ることは闇を増幅することは間違いないことが、今回の政権交代でわかった気がします。
国民はもっと利口にならないといけません。
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コメント
今回の政権交代も、こういった事では国民に警鐘を鳴らす事が出来たのかも知れませんね。まんざらでは無かったと言う事になるのでしょうか。
>国民はもっと利口にならないといけません。
今の日本を見ると、もう少し酷い目に逢わないと、政治家を筆頭に大多数の国民の目が覚めないように思いますね。
もうこれ以上酷い目に逢いたくは無いのですが
投稿: HAPPY太郎 | 2010年8月22日 22:28
こんばんわ。
「3億2000万㌦」なんて、凄い金額ですね。
投稿: H.K | 2010年8月22日 22:35
HAPPY太郎さんへ
痛い目に遭わないと分からないというやつですかね

H.Kさんへ
正確には3億4000万ドルですね
投稿: 玉井人ひろた | 2010年8月23日 08:04
日本の弱腰外交は伝統的になってしまいましたね。
魑魅魍魎が跋扈する世界では密約があったとしても驚きませんが、税金は国益のために使っていただきたいものだと思います。
確かに情報収集能力もお粗末ですし、安全保障に対する考え方も甘いと言わざるを得ません。
金を出して外国に守って貰うという考え方も本当に独立国家なのかと疑問に思います。
そんな金があるなら、その分国防予算を増やして増強し、戦争を回避するためにも核を保有すべきだと思うのですけどね。
兵器だって自主開発して外国に売ればいいのに。
どうも戦後の日本人はそういう外国では当たり前のことに対するトラウマを植え付けられ、自分で育てて来てしまったようです。
投稿: がんさん@大和の国 | 2010年8月23日 13:02
がんさんへ
おおお!過激ですねえ
)
まあ、実際には核不拡散条約に加盟していますから、世界の国と国交断絶をしない限り核は作れないですし、国防費は現在アジアでは一番、世界でも5本の指に入る世界有数の高額軍事予算国家が日本ですから無理でしょう。
日本製の銃などは現在世界一の技術ですが、販売は禁止していますね。
ただし、中東ではメイドインジャパンの銃が売れているそうです。もちろん偽物です
投稿: 玉井人ひろた | 2010年8月23日 20:47
政権交代のいいところもあったのですね。
長い間同じ一党が政権を持っていたので、そのまま同じ
党が政権を持っていたら分からないままでしたね。
何故かあまり大きくマスコミなどで取り上げません
でしたね。
3億4千万ドルですかーーー、日本国民の汗水たらして
収めた税金を嫌な使い方していますねーーー。
佐世保に行った時に、アメリカ軍の関係かどうか分かり
ませんが(多分アメリカ人)の女性が日本人に混ざって
九十九島をクルージングするのに、その仲間の
アメリカ人に周りの日本人を目で差しながら英語で
「貧乏!貧乏!超貧乏!!」と大きな声で話して
いました。
とっても嫌な感じでした。
投稿: 浜辺の月 | 2010年8月25日 23:10
浜辺の月さんへ
まだまだ、植民地支配のイメージが消えないのでしょうね
投稿: 玉井人ひろた | 2010年8月26日 06:52
アメリカの策略を知ったり、日本政府の態度に深く落胆した若泉敬氏は後年に自殺・・・・そんなこともあったんですねえ。北方領土は???中国は、琉球は中国の領土だったと言い出したとか???寸土を争って血を流し続けた歴史を日本人はもっと知るべきです。
投稿: 山口ももり | 2010年8月26日 08:38
山口ももりさんへ
沖縄は琉球国の固有の郷土、北方領土はアイヌ民族の固有の領土、それを隣国が勝手に我が物にしようとして争ったことは、日本も含め忘れてはいけない・・・ですね
投稿: 玉井人ひろた | 2010年8月26日 19:11