被害者のプライバシーと加害者の権利
今月に京都府亀岡市で起こった暴走車10人死傷事故で、府警亀岡署が事故を起こした少年(18)の父親に対し、被害者全員の住所や連絡先を無断で伝えていたことが判明しました。
そのあらましはこうです
亡くなられた松村幸姫さんの父親や夫によると、25日午後“故松村幸姫さんの携帯”に加害者の少年の父親から「謝罪したい」「告別式に出たい」といった電話がかかり、松村さんの夫が受る。
いったん切った後、こんどは「死んだ娘と話でもする気か?だれが番号を教えたんだ?」と憤慨した松村幸姫さんの父親が、着信した電話番号にかけ直すすると加害者の少年の父親が出たため聞きただしたところ「幸姫さんの携帯の番号は亀岡署から聞きました」という話になり、そのことを亀岡署に確認したら事実であることが判明。
直ぐに松村さんの家族らは亀岡署に猛抗議し、その結果として署長が松村さん宅を訪れて謝罪。さらに小谷真緒ちゃん(7歳)の家族にも府警の警察官が訪れ謝罪と説明となり、同時にマスコミにも知られることになる
ただし、その説明も当初府警側は、松村さんには「死亡した2人分だけ教えた」だったと説明。その後、10人全員分を伝えたと訂正したという。
テレビなどの記者会見では京都府警の大棚吉一亀岡署長が「ご家族、被害者の方を本当に傷つけることになり、全く‘配慮が足りなかった’」と頭を深々と下げ謝罪を繰り返していました。
この記者会見での署長の言った「配慮が足りなかった」という言葉で「警察が謝罪しているのは、どのことについて悪かったと考えたのか?」というモヤモヤした疑問の気持ちになったのです。
- 被害者や遺族に配慮し、被害者に確認してから、連絡先を教えればよかった
- 被害者や遺族に配慮し、亡くなった本人の携帯番号だけは教えるべきではなかった
- 被害者や遺族に配慮し、もっと時間が経過してから教えればよかった
「配慮が足りなかった」の言葉からイメージするのはこんな感じじゃないですか?
つまり、最初から「被害者の情報は‘教えてもよい’、差し支えない」、もっと荒っぽく言うと「被害者のプライバシーは守る必要なし。教えることは合法」という考えが警察側にはあるようにしか思えません。
加害者は未成年(18歳)の権利ということで実名報道もされていません。
それなら、同じ未成年者である亡くなった「小谷真緒ちゃん(7歳)」だって“実名報道無し”じゃないと釣り合いが取れないじゃないですか。
警察は、(亡くなった場合)被害者には無断で実名をマスコミに教えてもかまわないが、加害者は守らなければならない。
どこかおかしくないですか?
公務員の守秘義務にはこんなふざけた判例が存在します。
「保守する必要性が無い場合、言っても構わない」「自分が管轄担当した仕事の秘密は守らなければならないが、他の部署からのを偶然聞こえたものには守秘義務が生じない」
地方公務員でもある警察では、“亡くなった人はもう守る必要が無い=守秘義務は無い”ということが一般化しているように見える今回の対応だった気がしてならないです。
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コメント
お疲れ様です。
今回の事例とは少し違うと思いますが、以前は容疑者段階でもマスコミに顔写真が載った時期が有りましたが、現在はかなり「黒」に近い人でも防犯カメラの映像はモザイク等で保護をしています。結果論ですがもっと早く公開していれば事件も起こりにくかったり、犯人逮捕も早いのでは・・と考える人も多いのではと思いますが。公開への線引きも「裏」をとってからかいずれにしても難しい問題ですね。
投稿: えちごのじご | 2012年4月26日 (木曜日) 16:59
えちごのじごさんへ
そうなんです。出したために逃げられたりも有りますし難しいですよね
守秘義務も医療現場では厳しいようですが、その他は線引きがあやふやのようです。
投稿: 玉井人ひろた | 2012年4月26日 (木曜日) 17:11
交通事故の時、相手の住所・名前を聞かなかったんです。
当然警察が教えてくれると思っていました。
ところが・・・
相手の承諾を得てからでないと、教えられないと言いました。
このときは相手が承諾しましたので、もちろんこっちもOKですし、事なきを得ました。
もしお互い名前も知らなかった場合も事故処理は、スムーズに行くのでしょうか?
本題から外れてすみません。
投稿: もうぞう | 2012年4月26日 (木曜日) 19:52
もうぞうさんへ
それはまずかったですね。
警察は事後処理は無関係(民事介入はしない)になりますのでそれ以上のことは原則として警察はやりません。ただし警察署に呼び出しはしてくれます。
ですから、事故の時は必ず連絡先を当事者同士が確認し合うことが大切になりますね。
投稿: 玉井人ひろた | 2012年4月26日 (木曜日) 20:54