ふくしま“第3原発”・正力松太郎・中曽根康弘
昨年、東北電力は供給計画のなかで、浪江・小高原子力発電所(予定出力82.5万キロワット、浪江町、南相馬市)について、これまで平成28年度着工、33年度運転開始としていた時期を東京電力福島第一原発事故をうけ3月30日(2012年)に「24年度は未定」と変更になったことを発表しました。
その時に東北電力(株)の海輪誠社長は、仙台市の本店で記者会見し、「浪江・小高について地元の意向は厳しいと受け止めているが、撤回ではない。」という考えを発表していました。
ところが・・・
浪江・小高原発建設予定地の地元では「浪江町議会が誘致決議を白紙撤回。南相馬市議会は建設中止を決議」という事態となったように、原発建設反対の世論は変わらず、ついに今年の国に提出した平成25年度の供給計画から同原発の開発予定を外したことが発表されました。つまり“浪江・小高区原発”の建設計画は無くなったことになります。
さてこの“浪江・小高区原発”というのは、東京電力の第一原発(1F)と第二電力(2F)に対して、3つ目なので「ふくしま第3原発」などという言い方もする人がいるのですが、福島県内でも建設予定地の地元ぐらいしか知らないくらいですから、全国的には知られていないものだとお思います。
ちょっと、“浪江・小高区原発”=「ふくしま第3原発」の歴史を語ってみます)
今回津波によって事故が起きた福島第一原発があるのは福島県の太平洋側にある双葉郡(ふたばぐん)の大熊町(おおくままち)とその北隣の双葉郡双葉町(ふたばまち)の二つの町をまたいで立地されています。
東北電力が計画していた“浪江・小高区原発”の場所は、その東電第一原発(1F)から直線距離で約15~20キロメートルほど太平洋沿いを北に行った双葉郡浪江町(ふたばぐんなみえまち)と南相馬市(みなみそうまし)の南部にある旧小高町(おだかまち)との堺近くになる「双葉郡浪江町棚塩」というところになっています。(地図によってはその予定地が載っている)
昭和43年(1968)、当時の木村守江福島県知事が「浪江・小高原発」と「東電第二原発」の二つの原発建設計画を発表する。
建設計画が始まったのは、福島県双葉郡の楢葉町(ならはまち)と富岡町(とみおかまち)にある東京電力第二原発(F2)の建設計画が始まったときとほぼ同じ時期になります。
この時期は昭和35年(1960)ごろ見つかった水俣病問題から起こった環境意識の高まりで始った‘反公害運動’がピークになった時期と重なり、当然東京電力第2原発(2F)と東北電力“浪江・小高区原発”の建設には両方ともに激しくそして長期間の「原発建設反対運動」が起こったことは当然です。
しかしその結果は対照的でした。
放射能問題を争点に共産党系や社会党系の団体が参加し活動を行った2Fは昭和50年(1975)に着工、「農地を守る」をスローガンに地元農民だけで戦った浪江・小高原発の建設計画は今年無くなりました。
昭和30年(1955)正力松太郎氏が中心になって成立した原子力基本法、その実践実験になったのが東京電力(株)の福島第一原発(1F)、そして関西電力(株)の北陸福井原発です
そして昭和54年(1979)3月3日、中曽根康弘衆院議員(後の総理大臣)らが中心となり、当時の保守党である「自由党」、「改進党」、「日本自由党」の3党(後の自民党)が54年度政府予算案の修正案を衆院予算委員会に上程し、原子炉築造予算が翌4日には強行採決され衆議員を通過してしまいました。
その予算額は核燃料の「ウラン235」の“235”の語呂合わせから‘2億3500万円’とされたのです。
ち密に計算された数値に裏打ちされたのではなく、何の根拠もないダジャレ予算でした。
そのでたらめさの結果が、今の原発事故の姿だとしたら、今回のことはやはり国家的人災の比率のほうが高いとしか言いようがないですね。
※、今回の内容は福島県いわき市出身で1984年生まれと言う若い社会学者「開沼博(かいぬまひろし)氏」が、震災が起こる前月(2011年2月)に書き上げた論文著書<「フクシマ」論>と、その書の解説的著書で震災後に書かれた「フクシマの正義」が基になっています。よかったら読んでみてください。これが本物の原発立地地域の思いが書かれた本です。
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コメント
我々福島県民は、いえ、日本国民は何かと言うと偉いさんに任せてしまう体質を改め、自分たちの目で自分たちの周りで起きることを見極めるべきだと心底思います!
投稿: 空 | 2013年5月 7日 (火曜日) 14:20
空さんへ
1500年以上も続く官僚制の社会の日本では、国民の根底に「お上には逆らえない」あるようです。
ただ、戦後からそれはかなり減少を続けているのも事実ですから、日本は大丈夫でしょう
投稿: 玉井人ひろた | 2013年5月 7日 (火曜日) 14:39
何の根拠もないダジャレ予算・・・酷い話ですねえ。
投稿: 山口ももり | 2013年5月10日 (金曜日) 07:38
山口ももりさんへ
何の知識も無く、原発推進有りきでの論理だとこうなるんでしょうね
投稿: 玉井人ひろた | 2013年5月10日 (金曜日) 08:27