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2015年2月13日 (金)

イソップ物語の翻訳に日本人のこころ

伊曽保物語』と当時は書いた「イソップ物語」という印刷物が日本国内で発刊されたのは文禄二年(1593)、豊臣秀吉が朝鮮出兵を行った翌年ごろになるそうですが、それは日本人向けのものではなく、日本に来ていたヨーロッパの宣教師のために日本語訓練用として、ポルトガル 風のローマ字で綴られた日本語の印刷物だったそうです。

現在はたった1部だけが現存し、イギリスはロンドンにある「大英博物館」に保管されているそうです。

九州の天草で発行されたその本はイエズス会宣教師 ヴァリニャーノが伝えた活字印刷によるもので七種作られましたが、その一冊目がイソップ物語では最も有名な「蝉(せみ)と蟻(あり)」のお話だったそうです。

イソップ物語が、日本で一般かしたのはそれから300年以上も経った明治時代になって、イギリスで発刊されていたものが翻訳されて出版されてからだそうです。

イギリスでは「セミ」という昆虫が生息しないため、「キリギリス」に替えられたタイトル「アリとキリギリス」となっていたため、日本でもイギリスのイソップ物語と同じく「アリとキリギリス」となって、今に至ったようです。(東欧では、蝉はコオロギに替えられた

この「アリとキリギリス」の物語は殆どのかたが知っていると思いますが、原典である「セミとアリ」の翻訳は、知らないかと思いますので記載してみましょう。

<河野与一訳『イソップのお 話』より(岩波少年文庫)>

 冬になって、穀物が雨に濡れたのでアリが乾かしていますと、おなかの空(す)いたセミが来 て、『食べ物をもらいたい』と言いました。
 『あなたは、なぜ夏の間食べ物を集めておかなかったんで す?』
 『暇がなかったんです。歌ばかり歌っていましたから』と、セミは言いました。
すると、ア リは笑って言いました。
 『夏の間歌ったなら、冬の間踊りなさい』

原典の文章はこれより短いほどの短文物語だそうですが、その意図するものは「働く者の尊さと備えの大事さ、そして怠け者へのあざけりと仕打ち」ですね。

この物語が本来なのですが、日本では翻訳家が結末部分を替えたり足したりしているんだそうです。

<天草版>
・・・中略・・・、蟻、げにげにその分ぢや。夏秋 歌い遊ばれたごとく、今も秘曲を尽されてよからうずとて、散々にあざけり、少しの食を取らせて 戻いた

<現代版(小学館)>
・・・中略・・・、アリさんはキリギリスに、「さあ、遠慮なく 食べてください。元気になって、ことしの夏も楽しい歌を聞かせてもらいたいね」・・略・・キリギリ スは、うれし涙をポロポロこぼしました。

少し、文章は違いますが、原典でアリは(セミを)嘲笑し嘲り、さらに屈辱的な皮肉の言葉を浴びせ、食べ物も与えず追い返しています。

しかし、これを翻訳した昔の宣教師や明治の翻訳家たちは「これではキリギリスがかわいそう。アリが悪者になる」として、文章を付けたし変えてしまったようなのです。

つまりこのイソップは、ヨーロッパでは「自助の努力を怠るな」を強調する話だったのが、日本では「苦しい者にはお情 けを」の話に変えられてしまったのが日本国内の「アリとキリギリスのようなのです。

日本人には「儒教」や仏教」が無意識のうちに根付いていますので、こうなったんでしょうね。

ところで、わたしが記憶している「アリとキリギリス」では、どうだったかと考えてみたんですが、
私の記憶では原典と同じくアリは何も食べ物を与えないで、キリギリスは雪の中で凍死して終わった気がしてならないのです。

記憶違いでしょうか?

だいたい、生物学的に言えば半年ほどで死んで越冬しないセミやキリギリスの成虫は食べ物を蓄える必要がない、それにくらべ3~4年、長いと10年も生きるアリは食べ物を蓄えておかないと暮らせないですよね。

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コメント

印刷というと、グーテンベルク。
それ以前の印刷は、木版でしょうかね~

投稿: もうぞう | 2015年2月13日 (金) 19:09

昔、小学校の学芸会で「アリとキリギリス」をやりました結末は多分ですけど、暖かいアリの家でごちそうになったように記憶しています
ただ、私は主役級のキリギリスでも、台詞のあるアリの役でもなく、重い袋を背負った働きアリの役で舞台の右から左に行進しただけでした

投稿: | 2015年2月13日 (金) 20:37

もうぞうさんへ

印刷に関しては、今分っているものでは日本のが世界一古いですよね。木版でしょうね


空さんへ

やはり結末はキリギリスは食べ物を貰っているんですね。私の記憶は違っているのでしょうかね?

投稿: 玉井人ひろた | 2015年2月14日 (土) 15:26

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