ハサミ
歴史によれば、ハサミは紀元前1000年ごろのギリシャの遺跡から発見されたのが最古のものだそうですが、そこから用途別に種類が増え続けたことは間違いなく、現代の道具の中でも種類の豊富さはトップクラスでしょう。
「ハサミ」を和英辞典で調べるとそれぞれの用途ごとに名前が付けられた、主に4種類の単語が出てきます。↓
- scissors、⇒紙や布を切る鋏
- shears 、⇒↑scissorsより大きい鋏。植木や羊毛を切る大型鋏。
- clippers、⇒針金や木などを切る鋏
- claw 、 ⇒カニやエビなど生物のハサミ
さて、その具体的な使い方
例えば>
- 理・美容鋏⇒hairdressing scissors
- 料理鋏 ⇒kitchen scissors
- 剪定鋏 ⇒pruning shears
- 爪切り ⇒nail clippers
私が多用する植木などの剪定ばさみは「クリッパー(クリッパーズ)」のようで、それ以外のほとんどのハサミと言えば「シザー(シザーズ)」が使われるようです。
ただ日本国内では「シザー」と言った場合、理美容師さんが使うヘアーカット用ハサミをさすことが一般的になりつつあるようですね。
さて問題です。↓の英語表記名の日本での名称は何でしょうか?
Q,「hair clippers」
直訳すれば「髪ハサミ」ですから、理美容関係の言葉であることは直ぐに判るはずですが、日本国内では独自の名称になっています。
答えは、「バリカン」です。
つまり「バリカン」というのは日本語で、外国では通じない言い方なのです。では、なぜ日本ではバリカンと呼ばれるようになったか?
明治16年(1883)、在フランス日本公使館書記官(兼フランス語通訳)だった長田けい太郎(おさだけいたろう)という人物が「クリッパー」をフランスから持ち帰り、明治17年(1884)に「鳥海定吉」という理髪師が長田が持ち帰ったのを使用し、以後全国に普及したようです。
※、「長田けい太郎」とは↓
http://ya-na-ka.sakura.ne.jp/osadaKeitaro.htm
そのとき長田が持ち帰えったクリッパーが、フランスのバリカン・エ・マール(barignand et marre)製作所のものであったことで「バリカン製のクリッパー」が短縮され「バリカン」が通称となったようです。
明治17年(1884)12月4日の読売新聞にはすでにバリカンの広告が掲載されているようですが、記録上に「バリカン」の名称が現れてくるのは、明治40年(1907)になってからのようです。
そう言われれば、確かにバリカンは変形のハサミなんですね。今更に、その名称と形状を改めて知ることになりました。
余談ですが、英語にはその他に、「挟み切る」「鋏を入れる」などの場合には違ったハサミ的な単語↓が使われるようです。
- nippers、⇒医療用鉗子(かんし)、ニッパ、ペンチ。生物のハサミ。
- snips、 ⇒チョキンと鋏で切ること。少し切ること。金属板用手鋏。
- punch、 ⇒切符に鋏を入れる’に使う単語。
なんだか、最近の美容院では上記にある「snips」という店名流行だとか(?)。その名称のいみからいくと、さらに理容と美容の区分けの曖昧さが進みそうですね。
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コメント
和ばさみというのがありますが、日本特有のものではないらしいですね。
紫式部などは、美しくそろえた髪を何で切っていたのでしょう?
投稿: ましま | 2016年2月 6日 (土曜日) 15:02
ましまさんへ
紫式部の髪は、切っていないようです。髪はある程度伸びると自然に抜け落ちんだそうで、紫式部の時代は櫛ですげるだけでよかったようですよ。
投稿: 玉井人ひろた | 2016年2月 6日 (土曜日) 16:37
かの金田一京助先生が、バリカンの語源を調べても分からないで、苦労したとか?
正解は記事の通りでしょうけどね。
お見事です。
投稿: もうぞう | 2016年2月 6日 (土曜日) 19:10
もうぞうさんへ
金田一さんの時代に、ネットが有れば違ったでしょうね
投稿: 玉井人ひろた | 2016年2月 7日 (日曜日) 19:50
外国語の方が 「はさみ」や「切る」ことに関しては
単語が豊富なよう。
日本語だと 〇〇はさみ でほとんど用が足りる。
「切る」の別用法として「カット」という言葉
があてはめられ、「剪定ばさみ」のみ共通語が
あるようですね。
投稿: あね | 2016年2月 7日 (日曜日) 21:12
あねさんへ
ハサミの歴史の差かもしれませんが・・
たぶん、日本の方がハサミの種類が多いために単純になったのかもしれませんよ
投稿: 玉井人ひろた | 2016年2月 8日 (月曜日) 10:29