「法王」か?・・・「教皇」なのか?
新聞の記事では‘ローマ教皇(法王)来日’といちいち‘(法王)’をつけた説明記事が記載されていました。
なぜこうなったかは、知っている人は知っているでしょうが、今まで政府やマスメディアのほとんどが「ローマ法王」と言っていたのを、38年ぶりのバチカンからの来日に合わせ、日本のカトリック協議会(宗教法人カトリック中央協議会)が統一すること求めていた「教皇」の敬称に、来日寸前の今月11月20日に日本政府は決まりました。
それをうけ、今までの「法王」の言い方との疑義・混乱を回避するためマスメディアが行った処置です。
さて「法王」と「教皇」、どっちが正しいのか?(適切なのか?)と問われると
答えはどちらも正しいとも言えるし、ある意味でどちらも間違っているとも言えるし、これがなんとも複雑なんです。
どちらが良いのかは、時代と時系列で呼び方の経緯を見たらよく判りました。
- 江戸時代>
日本でも戦国~江戸初期には、「パアパ(パッパ)」としていた。
(キリスト教の最高位者の呼び方は父を意味する「パパ(Papa)」と呼ばれるため)
※江戸中期では、儒学者・新井白石は「教化之主」(本来は釈迦など高僧の意)と記した例もある。 - 1942年(昭和17)
バチカン市国との外交関係樹立し、東京・千代田区にあるバチカンの大使館を設け、その表札に「ローマ法王庁大使館」と記載されたため、ローマ法王という言い方が一般化する
日本では古来から宗教の最高指導者を「法王」と呼ぶ、これは本来は仏教の「仏法の王」を指すサンスクリット語の「ダルマラージャ」の和訳だが、キリスト教にもそれを採用。 - 同年以後のカトリック教会
この時を機に、日本のカトリック教会では「法王」という言い方をするところと、「教皇」という言い方をするところの両方が現れるようになり、中央協議会では混乱が始まる。 - 1981年(昭和56)
この年の2月にローマ法王「ヨハネ・パウロ2世」が来日、これに合わせカトリック協議会ではこれまで混乱していた表記を「ローマ教皇」に統一することを正式決定。あわせて日本政府にも統一を(強硬に)要求。 - 2019年(令和元年)
日本政府は今回のローマ教皇(法王)フランシスコの38年ぶりの来日に合わせ、今月11月20日に「ローマ法王」の呼称を「ローマ教皇」に変更することを決め、マスメディアもそれに追従する。
これによってカトリック協議会とも敬称が統一された。
教皇に変えた理由を外務省説明では「『教える』という字のほうが、教皇の職務をよく表わすから」という内容のようですが、実際は(強硬に)「教皇」が正しいと主張するカトリック協議会の統一要求を政府がのんだ気がします。
そして、ローマ教皇の正式な肩書は↓
「ローマの司教、イエス・キリストの代理者、使徒たちのかしらの後継者、普遍教会の最高司教、イタリア首座司教、ローマ管区首都大司教、バチカン市国元首、神のしもべたちのしもべ」
というふうに、とても長いもので、通称として「papa(パパ)」と呼ぶのが常識のようです。
つまり、結論を言えば「教皇」も「法王」も日本国内だけの独自な言い方であり、国際的には違った言い方言うことになります。
でも、日本では「パパ」とは言い難い。
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コメント
怪訝に思っていた点ですがよくわかりました。その国で言い慣わされた呼称がもっとも親しみがわくのに、権力をむき出しにしたようでちょっとがっかりしました。
投稿: ましま | 2019年11月25日 19:01
ましまさんへ
なるほど、そういう感じ方もあるんですね
投稿: 玉井人ひろた | 2019年11月25日 20:49
よくある日本語への訳し方だと思っていましたが、深い意味合いがあるのですね。
さてようやく日本人氏名のローマ字表記、名字が先になるようですが、徹底するまで時間がかかることでしょう。
さらにどうせなら、JAPANからNIPPONに統一して欲しいものだと思っています。
投稿: もうぞう | 2019年11月26日 07:10
もうぞうさんへ
NIPPON、国際大会では一部の競技で使われたと思いますが、変わるには国家的、文科省の決断が欲しいでしょうね
投稿: 玉井人ひろた | 2019年11月26日 08:00
世界史は学校では苦手でした。ほとんど知りませんでした(-_-;)
投稿: 吉田勝也 | 2019年11月26日 11:05
吉田勝也さんへ
たぶん、教科書には出てこない歴史です
投稿: 玉井人ひろた | 2019年11月26日 11:41