やくざな犬張子?!
最近、BSでは「日本の歌」や「日本のこころの歌」などと称する歌番組が増えている気がします。
そこでは、現在活躍する演歌歌手が懐かしい歌を歌うのが常ですが、有名な詩ばかりなので私としては解らない歌も歌詞もほとんどありません。
そのなかでも昭和初期など戦前の歌に使われている歌詞には「あれっ?!」というのがたまに出てきます。
あの有名な東海林太郎氏が歌った名曲で、昭和9年(1934)にレコード発売された『赤城の子守唄』の歌詞のことです。
これは幕末の侠客・国定忠治を描いた松竹映画「浅太郎赤城の唄」主題歌だったそうですが、歌があまりにもヒット(50万枚売)したため映画の題名も『赤城の子守唄』変更されたという逸話があるそうです。
「赤城の子守唄」
作詞:佐藤惣之助、作曲:竹岡信幸♪ 泣くなよしよし ねんねしな
山の鴉(からす)が啼いたとて
泣いちゃいけない ねんねしな
泣けば鴉が またさわぐ坊や男児(おとこ)だ ねんねしな
親がないとて 泣くものか
お月さまさえ ただひとり
泣かずにいるから ねんねしなにっこり笑って ねんねしな
山の土産に 何をやろ
どうせやくざな 犬張子(いぬはりこ)
貰ってやるから ねんねしな ♪
歌詞に登場するところで疑問に思ったのは、黄色背景の①カラスを指す「鴉」という漢字、そして②「やくざな犬張子(いぬはりこ)」です。
まず、①の「鴉」という漢字への疑問です。
「カラス」と言えば「烏」という漢字が一般的な現代としては、一瞬「まちがい?カリのことか?」とみてしまったのです。
すると、カラスの漢字には「鴉」、「烏」、「雅」の三種類が存在していました。
昔の人は、カラスの鳴き声は「アァ」と聞こえたらしく、漢字源辞書によれば「鴉=アと鳴く鳥」、「烏=アァ」、「雅=アと鳴く鳥」という意味になるようです。
後に「烏」の文字は「ウ」という鳴き声を表す文字になり「雅」は「ガー」と鳴く鳥を表すように変化したようです。
つまり、カラスの鳴き声が「アァ」から「ウゥ」になり「カー」に変化し、漢字の使われ方も変わっていったようです。
そして、もっと疑問に思ったのは②の「やくざな犬張子(いぬはりこ)」という表現です。
ヤクザといえば、国定忠治のような任侠や近年なら暴力団などを指す言葉、さすれば「ヤクザな犬張子」とは「任侠顔の犬の人形?」になってしまいます。
そしたら、「大辞林」によれば
- 役に立たないこと。まともでないこと。つまらないこと。
つまり、「やくざ」とは本来人にだけ使うのではなく、なんにでも使用していた言葉だったのです。
ですから「やくざな張子犬」とは「粗末でつまらない犬の人形」という謙遜してのことばになるようです。
時代と共に、歌詞の意味の受け取り方がかわってしまった例の一つですね。
私が、何度も指摘している童謡の「とおりゃんせ」の歌詞の誤解と同じですね。
行きはヨイヨイ、帰りは強い(こわい=しんどい。つらい)
強いながらも、通りゃんせ、通りゃんせ
そういえば、昨今は「強面(こわおもて)」の漢字も、「怖い顔」と誤解いされているようですね。
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コメント
納得しました(~o~)
投稿: 吉田勝也 | 2021年5月 1日 (土曜日) 17:10
>吉田勝也さんへ
私も納得しました
投稿: 玉井人ひろた | 2021年5月 1日 (土曜日) 17:47
ヤクザな生き方、と言えば渡世人、と言えば木枯らし紋次郎、と言えばあのテーマ曲、と言えば上條恒彦、と言えば小室等。どこかに、、、
昔は次男以下は家を出てゆくしかない。どこに行くのか?
婿入り出来れば良いが、ほとんどは大地主の小作人。
つまり奴隷と変わらない。家庭さえ持てない。
今のヤクザには同情出来るとこがあるだろうか?
なのに、未だ存在して居る事が不思議だ。
コロナと似ているとも言える。風見鶏状態、弱いとこには容赦ないヤツ。
投稿: 風流人 | 2021年5月 1日 (土曜日) 21:32
こんばんわ。
・「文章」を読んで。
これは、初めて聞きましたね。
投稿: H.K | 2021年5月 1日 (土曜日) 21:42
>風流人さんへ
ちょっと誤解があるようですね。
小作人になれるのは、貧乏農家を継ぐ長男です。
次男以下は、小作人にもなれず居候ですよ。
>H.Kさんへ
コメントありがとうございます
投稿: 玉井人ひろた | 2021年5月 2日 (日曜日) 07:55
玉井人ひろたさま
今日は~
何時もながら私より遥かにお若いのに、昔のことを
良くご存じで\(◎o◎)/!します。
カルタで八・九・三 最悪ですね。
投稿: 平井輝久 | 2021年5月 2日 (日曜日) 11:34
>平井輝久さんへ
ハンドルネームを変えられたのでしょうか(?)
知らないことのほうが多いので、記事にできるとも言えます。
「893」は、そうなりますね。
投稿: 玉井人ひろた | 2021年5月 2日 (日曜日) 16:29
へ~
深いな~
投稿: もうぞう | 2021年5月 3日 (月曜日) 18:02
>もうぞうさんへ
今回は、さほど深くなかった気がします
投稿: 玉井人ひろた | 2021年5月 4日 (火曜日) 09:34