黒い海 船は突然、深海へ消えた
2008年(平20)6月23日、福島県いわき市小名浜の水産会社「酢屋商店」が所有する第58寿和丸(すわまる)が、千葉県の犬吠埼から350キロ沖の太平洋上で沈没、乗組員の内3人が救助され4人が死亡し13人が行方不明になる事故が発生しました。
この事故調査を行った国土交通省運輸安全委員会は、2011年(平23)4月、沈没の原因を「漁具が右舷側沈没事故に寄って積まれ船体が傾斜している中、大波が連続して打ち込んだため」と結論を発表してこの沈没事故調査は終了しました。
ところが、
所有者である酢屋商店の関係者や助かった同船の乗組員からは「他船の衝突などの可能性がある」という調査結果に対する指摘がなされ続けたのでした。
現場で見た「事実」を国に伝えても聞き入れてもらえなかった生存者の無念さ、そして所有者の酢屋商店社長野崎哲さん(68)の苦悩に共感し、フリージャーナリスト伊沢理江さん(43)が徹底した取材を通して書いた「黒い海 船は突然、深海へ消えた」(講談社)という本が、「大宅壮一ノンフィクション賞」に選ばれことが今日の地元紙の朝刊で紹介されました。
伊沢さんは取材をする中で「結論を出さなければならない」という運輸安全委の理屈があり、生存者らの思いと離れた報告書が仕上がったのではないか?とし、
同じように「組織の論理」が物事を覆い隠す構造はあらゆる分野にあるとし、受賞作が「不条理に苦しむ多くの人々の希望となることを願っている」という思いを語ったそうです。
運輸省が結論付けた2011年4月といえば、東日本大震災が発生した直後でもあり省庁にも事情があったのかもしれません。
ただ、この沈没事故に関して全く記憶が無いのは、どういうことなのでしょう?
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