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2025年6月 5日 (木曜日)

「ぶうん ちょうきゅう」を願って万歳・・

今朝のNHkテレビ小説「あんぱん」で、ヒロインの教え子の兄が出征するシーンがありました。

その兄が「行って来ます」とあいさつすると、すかさず婦人会の代表から「『行って、来ます』は良くない。『行きます』です」という、この時節特有の指摘がなされます。

そして悲しみをこらえ大きな声で妹が「武運長久を願って万歳」の音頭で、集まった人全員で一斉に万歳が叫ばれるという、戦時中シーンの定番の様子が行われ、わたしは亡き祖父や伯父たちの出征の様子が連想され胸が熱くなりました。

さてここで使われる婦人会の『来ます。』は生きて帰ろうと思われるから駄目だという指摘叱責と、「武運長久」と言う言葉の意味には大きな矛盾があることを知っているでしょうか。

 

「生きて帰るといこととは、戦う意思が無い非国民だ。」という当時の考え方による婦人会の指摘と注意は誰もが知るところです。

それに対し
「武運長久(ぶうん-ちょうきゅう)の願い。祈り。」のことばには、正反対の「生き残ること。無事の生還。」の意味があります。

この言葉が使われ出したのは、「日中戦争(志那事変)」ころからだとされます。(※「日中戦争」=国内では「志那事変」と称し、後に米英開戦と合わせて「大東亜戦争」と名が変わる。「太平洋戦争」の呼称は米英や日本海軍が使った名称

この戦争に兵隊として出征する夫や息子うあ兄弟に対し、残された家族や妻たちは「どうか死なないで、無事に生きて帰還してください」という願いを込め「千人針」というものを出生時に渡すことが流行り出します。

千人針には次のようなことが施されます。

  • 縫い付ける糸は、古代日本における女性が持つと信じられた「妹の力(いものちから)」とい霊力信仰から女性に限られた。
  • 「虎は千里を行き、千里を帰る」との言い伝えにあやかって、寅年の女性は特別に年齢の数だけ糸を通すことができた。
  • 穴の開いていない銭硬貨や銭硬貨を縫いこむ
    「五銭」は「死線(しせん=四銭)」を越え、「十銭」は「苦戦(くせん=九銭)」を越えるという縁起担ぎ
  • 戦っても死なず生きながらえるという意味の「武運長久」という文字を入れた

このように「武運長久」には、「どうか。どうか死なずに生きて帰ってくださいませ」という、切実な思いが込められた言葉なのです。

と言うことで今日の朝ドラの出征式では、婦人会の「生きて帰ることを思うな」という指摘、それと同時に「どうか死なないでください」とい相反する言葉が同時に発せられていたことになるのです。

たぶんですが、このころになると「武運長久」ということばは形骸化し、本来「生還祈願」の意味であることが判らなくなっていたため、「死なずに勝ち続けること」と意味が勝手に歪曲または誤解された可能性もあります。

解らないまま「無事の生還」を願っていたということで、だれにも指摘されなくなったか、わかっていても黙認されたのかもしれません

 

 

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